アスペルガー症候群を抱える弟を支えながら見守っています
30代女性、当時20代
発病までの背景
両親と私、弟の四人家族で暮らしてきました。私の弟が20歳の専門学校生の時にアスペルガーと診断されました。弟とは10歳年齢が離れているのですが、私の記憶の中では小さい時からとにかく感情のコントロールができない子で、すぐにひどい癇癪をおこし気に入らないことがあると物を投げつけてきてパニックのようになるという状態が続いていました。ですが中学生、高校と進むとそういった激しい行動は少なくなってきました。その代わり、交友関係がなかなか築けないという症状が前面に出てくるようになりました。成長とともに症状が変化していったように思います。
弟に現れたアスペルガー症候群の症状
小さい時には、親も私も弟の事を、ただ気性の激しい、そして気難しい子供という認識で捉えていたのですが、高校生へと成長してくると人とのコミュニケーション能力がひどく欠落している事に気づきました。学校では友人が一人もおらず、毎日学校と家の往復だけであとは部屋にこもっているのです。友人がいないという事で、担任からも極度な社会性の欠如や集中力の欠如などを指摘され続けており、専門医の診断を受けることをすすめられていました。そこで初めて両親もかなり状況が深刻であると感じたようです。精神科を受診させて様々な検査を行いました。その結果、アスペルガーとの診断を初めて受けました。脳神経の病気からくるものだとわかったことで両親も私も逆に今までの弟の異常行動の理由が全てそこにあることを知り、心からホッとしたことを覚えています。
コンピューター系の専門学校に進学する頃には学校もサボりがちになりました。単位を落とし留年となりましたが、なんとか卒業はしました。正社員の就職はできませんでしたが、小さなITのスタートアップ会社に契約社員として仕事が決まりました。ですがここでも上司や同僚とのコミュニケーションが円滑に行かなかったようです。かなり大変でしたがアスペルガーに理解のある上司がいたおかげで現在も仕事を継続することができているようです。
弟が行った治療
アスベルガーの診断をしてもらった精神科の病院は、もともとアスペルガーには定評がある病院でしたので、かなりスムーズに診断してもらうことができました。しかし病院選びは慎重にしないといけないらしいです。当たり外れが多いらしく、同じ精神科でもうつ病が得意で他の精神疾患は不得手だったり、アスペルガーや自閉症の専門家がいなかったりする精神科も結構多いのです。ですから必ず病院選びの際にはアスペルガーや自閉症を得意とする病院選びをする必要があると思います。
弟の場合、最初にアスペルガー診断を受けた精神科の部長先生がたまたまアスペルガーの権威だったのです。診断がすぐについたことは非常にラッキーだったと言えます。治療にあたっては発達障害者支援センターでのアスペルガーのトレーニングプログラムがあることを病院側から紹介されました。でも本人が行きたがらないのでそちらは利用していません。アスペルガーには治療薬もありませんから、他に特にこれといった治療は行っていません。
その後
弟は現在もスタートアップIT会社に契約社員のまま勤務を続けています。小さな会社なので弟に対して社員のみなさんがアスペルガーについて理解をしようと努力してくださっているようですし、温かく見守ってくださっているようです。障害者雇用の枠でいずれ正社員にしていただけるという話もあるので本当に弟は恵まれていると思います。生きにくさを小さい時から感じてきた弟が社会に参加して自立の一歩を踏み出そうとしているのは姉としても本当に嬉しいです。いかに彼がアスペルガーと上手く付き合いながら社会生活を送っていくかを私も協力しながら見守っていこうと思っています。
この体験談から学べること
むしろ診断されることで安心する。冷静に薬やカウンセリングに向き合える。
障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度により、企業は従業員全体の2.0%に相当する数の障害者を雇用することを義務付けられています。(対象企業は従業員数100人超の企業。障害者雇用率は段階的に2.3%に引き上げられる予定)
これにより、アスペルガー症候群を抱えていても契約社員や正社員になりやすい土壌はあるといえます。