かけっこのピストル音が苦手な幼稚園の男の子
30代女性、当時5歳
私が保育園に通っていた頃、クラスメイトにアスペルガー症候群の男の子がいました。当時はアスペルガー症候群という言葉を知らなかったので、ただ落ち着きのない子という認識でした。
その子は大変音に敏感で、運動会の時にかけっこのピストルの音に驚き、耳を塞いでしゃがみこんでいました。そのために「お前のせいで負けた」と同じクラスの子に文句を言われ、いじめられている場面を何度も見ました。
また首から上の感覚が過敏で、電車ごっこ等の肩を掴む様な遊びはできません。だから運動会のムカデ競争でも、背が低いのに、一番後ろで大きな子の肩に掴まっていました。小さな体で引きずられるように走っている彼の姿は、今でもたまに思い出します。
(=>感覚が正常に働かない-アスペルガー症候群の特性)
ピストルが苦手なその子のために、先生は彼が走るときだけ、ピストルの代わりに旗を使用していました。それでもタイミングが合わなくて、上手くスタートができませんでした。しかしいつものようにしゃがみこむこともなく、少し遅れてゴールテープを切りました。私も大きな音が苦手だったので、彼と同じように旗でスタートしたかったです。ムカデ競争の方は対応策がなかったようで、いつものように引きずられるように走っていました。
運動会が終わっても、普段の生活の中で大きな音がすると、相変わらず彼は耳を塞いで部屋の隅の方へ逃げて行きます。誰かが泣いたりする声も苦手なようで、そんな時は人気のないトイレに一人で隠れていました。
その後の小学校では普通学級に通っていました。生活には大きな問題は出なかったのだと思います。発達障害と診断された場合でも工夫次第で普通に学校に通えることも多いと思いますので、親御さんも心配し過ぎないようにしてみてはいかがでしょうか。