診断を受けてから優しくなった
70代男性、当時60代
発病までの背景
私は自営業を営む両親の元、二人兄弟の長男として育てられました。
厳格な父と、とにかく私に甘い母、空気の様に存在感のない弟で、何不自由なく育てられてきたと思います。
母が言うには私は3歳で初めて歩いたそうで、私より先に兄がいたらしいですが、幼少の頃亡くなったので、次に生まれた私を王様の様に可愛がったらしいのです。
学生時代、思えば周りは嫌な奴だらけでした。
周りとは話が合わず、先生は私を叱りながらよく竹刀で叩いていましたが、当時はそれが当たり前で不審に思うことはありませんでした。
大人になって現れたアスペルガー症候群の症状
高校を卒業後、自営業の実家を継ぎました。
父は厳しく私とはそりが合わず、よく喧嘩をしました。
弟と父はよく似ていて、黙々と仕事をするタイプでした。
私は仕事が嫌いで、よく客と喧嘩をしていました。
偉そうにしている客の仕事はどうもする気になりませんでした。
弟目当てに来る客も多く、そんな客は決まって私と弟を比べて私を馬鹿にしていました。
どうにも抑えられず、客相手に罵倒していましたし、それで来なくなった客もいましたがそんなの構いませんでした。
金は欲しければ母がこっそりくれたし、女遊び、パチンコが大好きでした。
友人と呼べるものは居ませんでしたがが別に困りませんでした。母だけは味方になってくれていたからです。
嫁も母が連れてきました。
結婚し、子供も三人生まれました。
子供は成長すると次第に私を嫌い、避けるようになりました。
「言葉が通じない」「学校からの帰り道、家に近づくと聞こえてくる怒鳴り声が怖い」「恥ずかしい」そんな言葉を言われるようになりました。
子供は殴ったことがなかったし、怒鳴りもしなかったし、何がいけないのかわかりませんでした。
気づけば借金がどんどん増えていきました。
母まで私に怒るようになってきて、疎外感を覚えるようになりました。
私が行った治療
モヤモヤした日々を過ごしていた時に、母が他界しました。
それから急に寂しくなりました。
自分には何もなく、誰にも愛されていない、そう考えると眠れない日が続きました。
嫁が私を心配し、病院に連れていき、そこで、アスペルガー症候群と鬱病だと診断を受けました。
病院は県病院と呼ばれる、県内で一番古く大きな病院だったから安心できました。
診断を受けてからは精神安定剤をもらい、飲んでいました。
子供には知らせず、嫁だけが知っていました。
嫁は私を心配してくれていたようで、とにかく外に連れ出してくれました。
パチンコは禁止され、外食だけが何よりの楽しみでしたので、喜んで出かけていました。
薬を飲みだしてからは少しずつ夜も昼も眠れるようになっていきました。子供たちも母が亡くなってから、私を心配してくれる様な様子を見せてくれるようになりました。
それから半年位でしょうか、不思議とイライラが治まって行き、子供たちにも「優しくなった」と言われる様になりました。
その後
今現在、長男の家で同居しています。
父も亡くなり、実家を処分し、その金で借金を返す事ができました。
私自身も変わったと感じますが、周りの反応が大きく変わったと思います。
長男の息子、すなわち孫の面倒をみる生活は、体に鞭打って遊んでいますが、中々悪くありません。
他人とはまだ関わるのは得意ではないので、外に出ると途端に口数は減っていますが、失言が多いと言われるので、あまり余計な事は言わない様にしています。
それでも、時折長男の嫁とは衝突してしまいます。
ただ、前ほど疎外感を感じはしませんし、楽しくもあります。
病院は数か月に一度、通っていますが、現在は薬は飲んでいません。
私の嫁の態度も大きくはなりましたが、それはそれでよかったと思っています。
この先どれほどの生きれるかは分かりませんが、今こそ自由に生きている気がします。